長南です。 用語についてだけ。 主に JIS X 0301 を参考にしました。これは、ISO 8601 の翻訳に元号についての 記述を付け加えたものだそうです。 最初に ISO 8601 については、「標準」というより「規格」の方がよいと思います。 JIS X 0301 でも ISO 8601 について「原国際規格」と呼んでいます。 ○ century たとえば、%C の説明の The century number (year/100) as a 2-digit integer. 2 桁の世紀を表す数字 (year/100; 西暦年の上 2 桁)。 私も date の info では「世紀」と訳しましたが、その時もどうにか ならないかなあと思っていました。実際には、世紀マイナス 1 ですから。 上の例なら、「(西暦の or 年の) 世紀の部分に当たる 2 桁の整数 (year/100)」と 「部分」を入れると、少しはごまかせるかもしれません。 JIS X 0301 では「百年代」と言っています。引用すると、 参考 原国際規格の "century" は、世紀ではなく、百年の単位を表し、 "百年代" と訳した。グレオリオ暦で表示した年数の下位 2 けたを 除いた残りの 2 けた。 でも、「百年代」は耳慣れない言葉なので、JIS の訳だと言っても、使えるかどうか。 ○ era, era-based 「年代」または「年号」と訳していらっしゃいますが、「年代」はちょっと 無理だと思います。明治時代とは言っても、明治年代とは言わないでしょう (それとも、言うかな)。明治初年代となら言いますが。 令和に変わったとき、年号 (JIS では元号) をどこで設定しているのか、調べた ことがあります。/usr/share/i18n/locales/ja_JP 中の era という文字列で 始まるところなんですね。それで、こんなことをやってみました。 $ cd /usr/share/i18n/locales/ $ grep -l '\bera\b' ./* ./ja_JP ./km_KH ./lo_LA ./th_TH km_KH は、カンボジア、lo_LA はラオス、th_TH はタイ。この三国は、 お釈迦様の没年、またはその翌年を元年とする仏暦 (仏滅紀元とも言う) も使っているそうです。これがこの三国にとっての era (Buddhist era)。 そこで、era や era-based は、「年号、元号」ですむところは、それでよい として、ほかのところは、「西暦以外の紀元 (名) や年号」などと説明的に 訳しておけばよいのではないでしょうか。「西暦以外の紀年法 (の名前)」とも 言えますが、「紀年法」は、あまり使わない言葉かもしれません。また、場所に よっては、「西暦以外の年数表記 (表示)」で済むかもしれません。 ヒジュラ暦の紀元はどうなっているんでしょう。/usr/share/i18n/locales の ar_EG (エジプト) にも fa_IR (イラン) にも era という項目はありませんでした。 ○ NOTES から ISO 8601 week dates ISO 8601 の週・曜日表記 (Week Dates) JIS X 0301 の「3. 定義」に「3.3 暦日付 (date, calendar)」 (「こよみひづけ」と読む)に対して、「3.5 暦週日付 (date, week)」 という項目があります。 「暦日付 (date, calendar)」の説明は、「暦年、暦月及び暦月の中の 序数によって指定される暦上の特定の日の日付」。 「暦週日付 (date, week)」の方は、「その暦週が属する暦年、暦年の中の その暦週を表す序数及びその暦週の中の序数によって指定される暦上の 特定の日の日付」。見出しの「ISO 8601 week dates」は、これでは ないでしょうか (ISO 8601 の原文と対照できると、はっきりするのですが)。 なお、備考として「暦週は、しばしば週とも呼ばれる」と書いてあります。 このパラグラフでは、曜日の表記のことは語っていないので、「ISO 8601 の週」 だけでよいのではないでしょうか。あるいは、ちょっとピンと来ないところは ありますが、JIS に合わせて、「ISO 8601 の暦週日付」。 ○ %G の説明から The ISO 8601 week-based year (see NOTES) ISO 8601 週単位表記の年 (week-based year; 「注意」の節を参照)。 他にも出てきますが、この「週単位表記の年」というのが、ピンときません。 週単位で年を表したら、52 週や 53 週がその値になるのではありませんか。 もっとも、「週を単位として年の始めと終わりを決める、その年。すなわち、 一年は月曜日から始まり、日曜日で終わる」というふうに単位という言葉を 使っているのなら、「週単位表記の年」も「週単位の年表記」も「週を単位に 使う年表記」も間違っているとは言えません。でも、よく考えないと何のことか 分からない弱点があります。 むしろ、based を素直に訳して、「ISO 8601 の週を基にする年の表示」 とでもした方が感じが出るのではないでしょうか (これだって、説明して もらわなければ、どういうことか分かりませんけれど)。「ISO 8601 の (規定している) 週番号に基づいた年 (の表示)」と「週番号」を出して しまう手もあるかもしれません。 まあ、「単位」でも「基にする」でも、分かりにくいことにたいした違いはない と言えば、そのとおりですけれど。 マニュアルに変更のあったところだけでなく、他のところもざっと目を通しておいた 方がよいと思います。自分の経験から言っても、直したくなるところが、いっぱい 出てくると思います。もっとも、だからこそ、そんなことはしたくないというのも、 よくわかりますが、今の自分ならこんな訳は絶対にしないという箇所が案外あるものです。 -- 長南洋一