デスクトップ指向データ管理
(D3M: Desktop Driven Data Management)

企業のシステム管理者が頭を悩ます課題の一つに、ネットワークにつながれたクライアントPCのデータ・バックアップがあります。これまではサーバシステムに対するデータ管理は一般的ですが、これに加えて膨大な数のクライアントPCに置かれたデータ群に対しても同様のデータ管理を行うことが求められています。これは、ここ数年のクライアントPCの性能向上やデスクトップ・ソフトウェアの機能向上、そして個々の社員レベルでのITスキル向上などの要因によりデスクトップ上に置き去りにされるデータが急激に増加しているためです。

共有データサーバによるデータ管理

システム管理者の立場から考えられるクライアントPCのデータ管理方法としては共有データサーバの導入が一般的でしょう。これは大容量のハードディスクを搭載したサーバにWindowsネットワークベースのファイル共有サービスやWebDAVを設定し、その共有領域を各クライアントPCから仮想ドライブ(Z:ドライブなど)として利用するものです。

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システム管理者はユーザに対して、クライアントPCで作成される大切なデータに関しては仮想ドライブに格納するように周知徹底させます。これにより全てのデータは仮想ドライブ経由で共有データサーバに書き込まれ、システム管理者は共有データサーバに書き込まれたデータのバックアップ作業にだけ関心を持つことになります。システム管理は共有データサーバを公開し、それだけを管理するため管理の手間が大幅に省けます。このようなアーキテクチャをデータ集中保護アーキテクチャと呼びます。 このアーキテクチャは以前から実施されてきた古典的な方法でありNFSやNetWare、SMB、WebDAVなど様々な技術が利用されてきました。

データ集中保護アーキテクチャの問題

昨今の技術革新によりクライアントPCの性能は格段に向上し続けていますが、その一方ネットワーク性能はそれほど向上していません。もちろんネットワーク・ハードウェアの性能も年々改善されてはいますが、ユーザが扱うデータサイズもまた年々増大しています。そのため通信ネットワーク性能がボトルネックとなる状況は依然として存在しています。例えばクライアントPCや共有データサーバ自体を最新の超高速マシンで構成したとしても、この通信ネットワーク性能のオーバヘッドが存在する限りそれらの性能を十分に活かし切ることができません。例えば共有データサーバに置かれた文書データをクライアント PCから読み込んでみれば、どれだけの待ち時間が生じるかはみなさんも経験上ご存じのはずです。クライアントPCがどれほど高性能であってもネットワークの待ち時間が全てを台無しにしてしまいます。

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この通信ネットワークのオーバヘッドはユーザに日常的な「いらだち」を与えることとなり、その結果ユーザはクライアントPC上にデスクトップ・データを個別に格納するようになっていきます。これはシステム管理者の立場からは「ルール違反」ですが、一方のユーザの立場としては至極当然の行いと言えます。このような状況にて万一クライアントPCにディスク障害が発生すればシステム管理者は「それは私の範疇ではない」となるのでしょうが、現実的に貴重なビジネス情報の消失が発生したことに某かの対策を打っておかなかったことには問題が残ります。

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デスクトップ指向データマネージメント(Data Driven Data Management :D3M)

これまで述べたことは現実の話です。IT調査会社のIDCによれば「企業データの60%以上がクライアントPC上に保存されている」という衝撃の調査結果があるほどです。

このような状況を見れば、システム管理側とユーザ側双方に大きな課題があることがわかります。システム管理側の課題としては、企業内に散在する膨大な数のクライアントPCに対するデータ管理を手間をかけずに実現することであり、一方のユーザ側の課題としてはデータが保護されるだけではなく手元のクライアント PCの性能を十分に活かされたIT環境を実現することです。

デスクトップ指向データマネージメント(Desktop Driven Data Management :D3M)は、これら双方の課題を解決するためのソリューションです。D3Mでは、これまでのような共有データサーバ主体のデータ集中保護アーキテクチャではなく、クライアントPC上に置かれたデータを中心とする分散データ同期保護アーキテクチャを採用します。クライアントPC上に軽量のデータ管理エージェントを導入し、クライアントPC上のデータを監視させます。そしてそれらデータに対する変更が発生するとそのホットショットコピーがサーバに同期保護されるものです。

D3Mでは、システム管理者はデータサーバに収集されるデスクトップ・データの管理だけに関心を持てばよく、これまで通りのバックアップ作業に従事するだけです。一方のユーザはデスクトップ・データを常に手元のローカルPCから直接利用できるようになり、通信ネットワークのオーバヘッドから解放されることになります。その結果ユーザは、クライアントPCの性能を最大限に活かした快適な実行環境を得ることになります。

またD3Mでは、従来のデータ集中保護アーキテクチャと比較してネットワークに掛かる負荷が少なくなるという利点もあります。ユーザは常にクライアントPCにある手元のデータを利用するため共有データサーバとの通信が不要となり、結果としてネットワークシステム全体の通信量の削減が実現されます。

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HotShotは、D3Mアーキテクチャを実現するためのエンタープライズソリューションツールです。御社の環境に単なるバックアップ機能を提供するものではなく、新しい分散データ保護アーキテクチャを実現するものなのです。